訪問販売では、お客様の自宅などお店以外の場所で契約をしますから、「どこに所在する何という事業者と契約したのか」「何を契約したのか」「いくらで契約したのか」などの情報をきちんと伝える必要があることから、書面の交付が義務付けられています。
書面を渡すべき時に渡さなかったり、渡していても内容が不十分・虚偽だったりした場合は法律違反となり、6カ月以下の懲役や100万円以下の罰金といった罰則も設けられています。
そして、申込書面・契約書面は、クーリング・オフ期間の起算点ともなります。書面が渡されていなかったり、内容が不十分であった場合には、お客様は契約の内容や相手方がわからないのですから、いつまででもクーリング・オフができるとされています。
その意味からも、お客様に正しく書面を渡すことが大事になります。

◆書面を渡す時期
訪問販売で契約の締結をした場合、販売業者等はお客様に、「契約の内容を明らかにした書面」(契約書面)を渡さなければなりません。多くの場合は、お客様に説明をし、お客様が契約の内容を理解して、契約すると言ってくだされば、その場で契約が成立し、販売員はこの書面を直ちに渡すことになります。その場で商品を渡し、代金ももらった場合には、「領収証」のようなものになることもあります。
ただし、販売員だけの判断では契約ができず、お客様からは一旦申込みをもらって帰るような場合もあります。そのような場合は、「申込みの内容を明らかにした書面」(申込書面)を直ちに渡し、かつ、後日契約が成立したときに、契約書面を遅滞なく渡すことになります。

◆書面の内容
契約書面・申込書面に書かなければならない事項は以下のとおり定められています。担当者が書面の記入欄に、もれなく正確に記入することも重要です。

①「書面の内容を十分に読むべき旨」 ※赤字で記載し、赤枠で囲む。
②商品等の種類
※商品における種類とは
消費者が商品を特定するために必要不可欠な事項を記載してください。
※権利または役務の種類とは
その権利や役務が特定できる事項をいいます。例えば「○×の会員権」「英会話教室」等がこれに当たります。ただし、その内容が複雑な権利または役務の場合には、記載可能なものをできるだけ詳細に記載する必要があります。したがって、例えば住宅リフォームに関する書面の場合、工事内容を詳細に記載せず、「床下工事一式」、「床下耐震工事一式」とのみ記載すること等は違反となりますので注意が必要です。
※書面上に記載しきれない場合には
「別紙による」旨を記載した上で、別途、役務の提供に関する事項を記載したものを交付しなければなりません。この場合、消費者が、別紙は申込み書面または契約書面と一体のものであると認識できるように同時に交付してください。
③商品の販売価格・権利の販売価格・役務の対価
④代金・対価の支払い時期及び方法
※支払方法には、現金・クレジット等の支払の形態と、持参、集金、振込の支払の方法を記載してください。分割して代金を受領する場合には、各回ごとの受領金額、受領回数等も記載してください。
⑤商品の引渡時期・権利の移転時期・役務の提供時期
・商品の引渡時期及び役務の提供時期については、その引渡しや提供が複数回にわたる場合には、消費者が回数・期間等についてハッキリと認識できるように記載してください。
・記載しきれない場合は、「別紙による」旨を記載した上で、申込書または契約書との一体性が明らかとなるように、同時に交付しなければなりません。
・「権利の移転時期」については、実質的に権利の行使が可能となる時期を記載しなければなりません。
⑥クーリング・オフに関する事項 ※赤字で記載し、赤枠で囲む。
⑦販売業者等の氏名または名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名
⑧担当者氏名
※必ずフルネーム(姓名)を記載してください。
⑨申込みまたは契約締結年月日
⑩商品名及び商品の商標または製造者名
※商品名は原則として固有名詞を記載します。それのみでは商品のイメージが不明確なものについては、併せて普通名詞も記載してください。商標とは、登録商標だけでなく販売業者の製造、取扱い等に係る商品であることを表示するために使用する通称等も含まれます。
⑪商品に型式がある場合には当該型式
⑫商品の数量
⑬引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
※ただし、この場合に、販売業者がその不適合について責任を負わない旨が定められていないこと。
⑭契約の解除に関する定めがあるときはその内容
※ただし、この場合に、消費者からの契約解除ができない旨が定められていないこと及び販売業者等の責めに帰すべき事由により契約が解除された場合における販売業者等の責務に関し、民法第545条に規定するものより消費者に不利な内容が定められていないこと。
⑮上記⑬⑭の他、特約があるときはその内容
※ただし、法令に違反する特約でないこと。

◆書面作成例
以下の書面作成例は、特定商取引法第5条に規定する「契約の内容を明らかにした書面」を作成するうえでの一例です。書面は取扱商品や取引内容に応じて作成する必要があります。書面を作成する際は、関係法令、通達・ガイドライン、逐条解説等をよくご確認ください。
→参考:契約書面(第5条)の作成例(PDFファイル)

また、令和元年10月1日より消費税率の引上げに伴い軽減税率制度が実施されました。特商法上の交付書面(5条書面)に複数の税率を記載したい場合は以下の作成例を参考にしてください。
→参考:契約書面(第5条)の作成例※複数税率記載(PDFファイル)

◆書面の電子化
令和5年6月1日からは、お客様の承諾を得た場合に限り、書面の交付を電子化(電磁的方法による提供)することができます。具体的には、書面に記載する内容を電子メール等で送信し、お客様の使用するPC・スマートフォン等で受信するといった方法などが考えられます。
ただし、お客様の承諾を得る方法や事前の説明・確認事項、電磁的方法による提供方法、提供後のお客様に対する確認事項等は法令や規則で細かく定められています。書面の電子化に係る禁止行為やクーリング・オフ期間の起算点にも注意が必要です。書面の電子化を行う場合は、消費者庁が公表しているガイドラインも必ず確認してください。→令和3年特定商取引法・預託法の改正について(消費者庁)
なお、当然のことながら、お客様の方から書面電子化を希望されても、事業者側が法令等に則った手順や方法で書面電子化を行う体制が整備できていない場合などは、原則通り紙の書面交付を行う必要があります。

 

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