法律では、訪問販売をする者が行ってはならないことを禁止行為として定めています。この禁止行為を行ってしまうと、懲役や罰金が科せられる場合もあります。また、業務停止命令や社名公表など行政処分の対象となる場合もあるので注意が必要です。
◆不実告知・重要事項の事実不告知の禁止
お客様に商品の説明をするときには、ぜひとも買ってもらいたいという気持ちで、その商品の良さを売り込むでしょう。このとき、事実でないことを告げてはいけません。「嘘をつこう」「相手を騙そう」という気持ちがなくても、つい力が入って大げさな説明をしたり、うまく説明できずにごまかしたりすることがあるかもしれません。そのような、「不実のことを告げる」行為(不実告知)は法律で禁止されています。
また、事実をあえて告げないことも「重要事項の故意の不告知」として禁止されています。
例えば、販売価格が1回目のみ低額で2回目以降は1回目と比べて高くなる契約であるにもかかわらず、「1回○○円で試すことができる」とのみ告げる場合などです。
なお、商品等の種類・性能・品質などについて、不実のことを告げたかどうかを判断するために、行政機関は事業者に対して「合理的な根拠を示す資料」の提出を求める権限を持っています。
◆威迫困惑の禁止
契約をさせるためや、クーリング・オフを妨げるために、お客様を威迫して困惑させることは禁止されています。
例えば、「買ってくれないと困る」と声を荒げられ、早く帰ってほしいために契約してしまった場合や、「クーリング・オフをするとこの近所では住めなくしてやる」などと脅されて怖くなってクーリング・オフを思いとどまったというような場合です。
威迫困惑とは、脅迫には至らないけれども、それにより不安を生じさせ、お客様を困り戸惑わせる行為をいいます。
◆販売目的を隠し公衆の出入りしない場所に誘い込んでの勧誘
契約の締結について勧誘するためだとは知らせずに、お店以外の場所で呼び止めて同行させたり(いわゆるキャッチセールス)、目的を告げずに呼び出したり(いわゆるアポイントメントセールス)して、『公衆が出入りしない場所』で契約の勧誘をすることも禁止されています。
『公衆が出入りしない場所』というのは、例えば、事業者の事務所や個人宅、公共施設の会議室、カラオケボックスなどの、不特定多数の人が自由に出入りすることが想定されていないような、密室状態の場所のことです。
◆その他、行政処分の対象となり得る禁止行為( 第7条・第8条)
上記の禁止行為には懲役や罰金が担保されていますが、法律では次のような行為も禁止しています。これらの行為をすると、直接懲役や罰金は科せられませんが、行政庁から改善指示や業務停止命令、業務禁止命令を受けることになります。
①債務の履行の拒否・不当な遅延
※商品の引渡しやクーリング・オフ後の返金などを拒否したり、不当に遅らせたりすることです。
②顧客の判断に影響を及ぼすことになる重要な事項の不告知
③正当な理由もなく通常必要とされる分量を著しく超える商品等の売買契約等の締結についての勧誘
④迷惑を覚えさせる行為
※例えば、正当な理由なく午後9時〜午前8時に勧誘することや、長時間にわたって勧誘することなどです。
⑤若年者、高齢者その他の者の判断力不足に乗じた勧誘
⑥顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当な勧誘
⑦契約書面等に虚偽の記載をさせる
⑧消費者を被保険者とする生命保険を付すことへの同意に係る記載が認識しにくい書面に署名・押印させる行為
⑨代金の支払い等契約の履行に要する金銭を得るための契約をさせるため、次の行為を行うこと
・消費者の年収、預貯金、借入状況等支払能力に関する事項について虚偽の申告をさせる。
・消費者の意に反して貸金業者や銀行に連れて行く。
・消費者に迷惑を覚えさせる仕方でクレジット(個別信用購入あっせん)や金銭の借り入れを勧誘をする。
⑩公共の場所での進路の立ちふさがり
※公共の場所とは、およそ公衆が利用できる場所全てを指すもので、公園・公会堂・劇場・飲食店等も含みます。
⑪化粧品や健康食品など政令で指定された消耗品の契約解除を妨げるために使用・消費させること
⑫書面の電子化(電磁的方法による提供)に際し、次の行為を行うこと
・書面電子化を希望しない旨の意思を表示した消費者に書面電子化の手続きを進める。
・不実告知や威迫困惑、財産上の利益供与、通常の書面交付に財産上の不利益を与える。
・適合性などの確認の際、偽りや不正の手段により消費者に不当な影響を与える。または、その確認をしなかったり、確認ができない消費者に書面を電子化する。
・偽りや不正の手段により承諾を代行したり、電磁的方法による受取りを代行する。
・上記のほか、消費者の意に反して書面電子化を承諾させるなどの行為。
お客様のためのクーリング・オフ制度(クーリング・オフ〜第9条)→